9月に『「戦後東京と闇市」新宿・池袋・渋谷の形成過程と都市組織』石榑督和 著が鹿島出版会から出版された。書名のとおり新宿・池袋・渋谷の現在の街並みの原型を形成した3地区の戦前の駅前広場計画、戦後のヤミ市の時期から解明した研究書。
全体は6章構成で、第2章が「四組のテキ屋が組織した闇市の盛衰(新宿)」、第3章「一主体が所有する広大な土地が支えた池袋の戦災復興過程」、第4章は「地主が開発したマーケットの簇生と変容」(渋谷)と3地区の詳細な記述となっている。400ページの研究書だがたくさんのカラーの地図・図や表が掲載されていて読みやすい。
3つの街の戦後復興過程を、新宿では4組のテキ屋が大きな役割を果たし、渋谷では地主が開発したマーケット開発が大きな役割をはたし、池袋は新宿と渋谷の中間のかたちでテキ屋と土地所有者が復興を支えたという。
池袋については、池袋の土地は、戦前の1944年の交通疎開空地、1945年の4月の大空襲で焼失した駅周辺と、東口は現在の南池袋公園あたりの広大な根津山、そして西口は現在の東京芸術劇場周辺にあった東京師範学校・附属小学校が、池袋戦災復興から現在の街並みの形成の支え。
そうした基盤の上で、ヤミ市として括られている東京マーケット、森口組西口マーケット、永安公司、仁栄マーケット、復興商店街、上原マーケットなどの商店街の盛衰について、そして、西口の東横百貨店池袋店(後に東武百貨店に)、東横に対抗して西武鉄道が武蔵野デパート(後の西武デパート)、東武鉄道が西口に東武会館を建設(後に東武百貨店)、池袋東口に民衆液として丸物百貨店(後にパルコ)などが街の形成に寄与した姿の記述もあり、池袋を考えるとき興味深い本だ。
池袋のヤミ市については、豊島区立郷土資料館が開館時(1984年)に調査、発掘し、展示として東口ヤミ市のジオラマを作成し展示をしていた。(現在改築のため休館中)。
■鹿島出版会 http://www.kajima-publishing.co.jp/
■豊島区立郷土資料館 http://www.city.toshima.lg.jp/bunka/bunka/shiryokan/