戦後池袋の検証「〈ヤミ市〉文化論」という本が2月に出版された。この本は2014年から始まった豊島区、立教大学、東京芸術劇場によって「池袋学」講座が開講し、その2年目の2015年秋のシンポジウム「戦後池袋の検証~ヤミ市から自由文化都市へ~」の記録を巻頭に掲載した書籍(ひつじ書房 税別2800円 全321頁)。
このシンポには社会学の吉見俊哉さん、日本文化研究者のマイク・モラスキーさん、作家の川本三郎さん、そして立教の石川巧さんが司会している。シンポの記録の小見出しは<池袋とは何か、ヤミ市とは何か、闇市の多面性、闇市というストリートカルチャー、闇市と文学、文学者の目に映った池袋、永井荷風、種村季弘、池袋の可能性など>。
Ⅱ部は「都市とメディア」で池袋駅西口の民衆駅(東横デパート)についてなどの社会学研究者の論文、Ⅲ部は「ヤミ市の表象」で映画や小説などについて、Ⅳ部は「風俗と表現」で占領期東京の小劇場・軽演劇・ストリップ、占領期のカストリ雑誌における原爆の表象、昭和20年の探偵小説・・・などとなっている。
筆者はシンポ参加者と初田香成さん、石榑督和さん、井川充雄さん、落合教幸さん、後藤隆基さん、河野真理江さん、中村秀之さん、山田夏樹さん、渡辺憲司さん、渡部裕太さん。
池袋のこれまでとこれからを考えるとき、この本は様々なヒントを与えるものになるのではないか。
ちなみに初田香成さんの論文「都市としての闇市」では、闇市については大河内一夫(元東大総長)さんの1950年論文と松平誠(元立大教授)さんの1985年論文を先行研究としてあげている。その松平さんは、1984年に開館した豊島区立郷土資料館の開設準備に関係していて、資料館の常設展示の一つ「池袋のヤミ市」の展示のために調査研究を資料館学芸員とともに行っている。
■ひつじ書房 http://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-89476-847-5.htm
■池袋=自由文化都市プロジェクト https://www.geigeki.jp/performance/20150914g2/
■池袋学2015 https://www.geigeki.jp/performance/event099/
■豊島区郷土資料館 http://www.city.toshima.lg.jp/bunka/bunka/shiryokan/